京都・一乗寺ブリュワリー

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2018.01.26

Interview01 – with Managers - 私たちが ビールを売る理由

 

「みんなおかしいよね」って笑い合える瞬間をつくりたいんだよね

 

高木 私は京都で精神科の在宅医療を行っています。主に「統合失調症」という精神障害を抱えていて、家にひきこもっていたり、入退院を繰り返したりする人たちを、在宅療養という形で応援する仕事です。

精神科医だけでなく、看護師、介護福祉士、作業療法士など、いろんな職種の人たちとチームで取り組んでいます。

 

 私がビール会社を経営することになったのは、「統合失調症」という障がいを抱える人たちの仕事をつくりたかった、というのが一番の理由です。

 

 なかなか社会に出られない人たちを在宅で見続けてきて分かったのは、彼らも本心では人とつながりたいんだということ、そして、仕事というものが彼らの回復に役立つんだということです。それで、何か仕事をつくれないかといろいろと模索してきた結果、たどり着いたのがビールでした。ビールづくりの周りには瓶に詰めたりラベルを貼ったりといろいろな作業があります。

 

 また、ビールは世界中にあります。原料が乾燥物なので、世界中どこでもつくれるし、季節を問わないから職人が育ちやすい。日本は明治以降ラガービール一辺倒だったのでチャンスもある。そう思って、2011年にビールづくりを始めました。

 

 障がい者が関わる仕事といえば、ビスケットやアクセサリーなどが定番です。もちろん、それが悪いと言いたいわけではありません。たくさんの人にちゃんと評価されるものを一緒につくって「一流のものに関わっている」と誇りに感じてもらえるようにしていきたいのです。

 

 精神科医として世の中を見ていて、人々の「生きづらさ」を生んでいる原因は、他者と対話をさせない社会にあると感じています。声の小さな人たちの声が届くように、ビールを通して仕事をつくったり、対話を促したりしていけたらいいですね。近寄ってみたらね、みんなおかしんですよ(笑)。うちのビールを片手に、「やっぱり君もおかしいね」って言って笑いながら、「みんな違う」という世界を受け入れる人が増えていけばいいなと思っています。

 

 

おいしいビールを飲んだ後に大事なことが伝わる。そんなお店でありたい

 

 京都市内で飲食店を 店舗経営しています。どの店も、「ほんまもんやけど気軽に楽しめる」をコンセプトに、出来るだけオール京都の食材を気軽な値段で提供したいと考え、展開しています。まちづくりと言ったらオーバーですが、お店というものを通じて楽しい場所をつくりたい。街が生き生きしているのがいいなぁと思っています。

 

 一乗寺ブリュワリーの経営に加わったのは2015年。高木さんの人柄に惹かれて、手伝うことを決めました。
 私の役割は、ビールの売り場をつくること、売り上げを伸ばすこと、このブリュワリーのイメージをアップして、京都を代表するビールにすること。

 

 それから小さくても強い会社にして、働いているスタッフ達が楽しく豊かに暮らせるようようにすること。その先は、私が社長をしている間に、うちのビールをアイルランドに持って行っても面白いなどと思っています。

 

 私たちがつくっているのは、されどビールなんです。つくり手の想いとか、生産者の想いももちろん大事ですが、一番大切なのは、いい雰囲気のお店と「おいしい」と思ってもらえるビールをつくること。お店でビールを飲むという行為の後に、賞を獲っているとか、弱者と呼ばれるような人たちの助けになるといったことが伝わるようになると、値打ちが出てくるなと思います。

 

 最初から弱者救済を目的にしたものは、長く続かない気がしていて、そうではない順番を大事にしながら、人の役に立つことをしていきたいですね。

 

 

 

左:代表取締役会長 高木 俊介(Takagi Shunsuke)

たかぎクリニック 院長

広島県因島生まれ。精神科医。 臨床を行いつつ、統合失調症の精神病理を研究。日本精神神経学会で精神分裂病の病名変更事業に関わり「統合失調症」の名称を発案し、2002年に正式決定。2004年、たかぎクリニック開設。包括型地域生活支援プログラム「ACT-K」を立ち上げ、チームによる精神障害者の在宅ケアに日々奔走している。

 

右:代表取締役 伴 克亘(Ban Katsunobu)

有限会社プロスパー 代表取締役

京都市出身。大学卒業後、カナダに1年間留学。帰国後26歳で起業し、先斗町に飲食店を出店。 1998年、有限会社プロスパーを創業。「本物でありながら、気軽に楽しめるお店」をコンセプトに、ICHIYAのほか、現在10店舗を先斗町・祇園エリアを中心に運営中。

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